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いちSEの学習記録

『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』を読んだ

雑感

  • 2020年に一度読んだが、読後感がよかったのを覚えており再読。
  • 物語形式で話が進んでいくため、主人公(転職を希望している30歳男性)に感情移入しながら、より自分ごととして読める。特に主人公のメンターとなる黒岩のセリフがぐっとくる。自分に問いかけられているようで、どきっとしたり、考えさせられたりする。
  • 転職がテーマではあるが、マーケットバリューの考え方など新卒の新入社員でも参考になる内容が多い。 また、定期的にキャリアのあり方について考え直すために、何度も読み直したい良本。

メモ

基本的に引用は主人公のメンターである黒岩のセリフ。

プロローグ

  • はじめての転職が多くの人にとって、怖い理由は「初めての意思決定」だから
  • 多くの人は、普段、実は何も意思決定しないで生きている

多くの人は普段、実は何もしないで 意思決定しないで生きている。君は自分で大学を選び、就職先も自分で選んできたと思っているかもしれない。しかし、それは、ただに、これまでレールの上を歩いてきただけで、自分で何も決めていない。電車に乗り、目的地に進んでいく大学であれば、世の中から良いと言われる大学を目指し、就職先も、世間的に良い会社を選んできただけ。だから、意味のある意思決定と言うのは必ず、何かを捨てることを伴う。これまでの人生で、そんな決断をしたことがあるか?

こういう問いかけがこの本の醍醐味。心にぐさっと突き刺さるフレーズが多い。たしかに人間、何かを捨てる決断は怖いし、なるべく避けたいと思うよなぁ。

第1章 仕事の「寿命」が切れる前に、伸びる市場に身を晒せ

  • 上司を見て働くか、マーケットを見て働くか
  • 給料は、君が「自分」と言う商品を会社に売り、会社がそれを買うから発生している。
  • 君はたまたま今の会社を選んだだけで、会社は君をたまたま買っている。つまり、雇用とは1つの「取引」
  • マーケットバリューを理解するには、まず自分を商品として考えること。
  • 転職を考える際に、まずやるべきは、自分の仕事の棚卸しをすること。そのために自分の過去のレジュメを書くこと。
  • もし他の会社では展開できないなら、それは技術資産ではない。
  • 20代は専門性、30代以降は経験を取れ。

つまり、専門性のある人間にこそ、「貴重な経験」が回ってくる、こういう構造なんだ。そもそも、「貴重な経験」は簡単に得られるわけではない。会社の重要なプロジェクトはいつも専門性の高いエース社員が任されるだろう?当たり前だ。言い換えれば、専門性のない奴に打席は回ってこない。だから、20代は専門性を身に付けて、それを生かして30代は経験を取りに行くのがベストだ。

「専門性のない奴に打席は回ってこない」は経験上正しい。一方で、つい「歳を重ねるにつれて専門性を身に付けていく」というようなイメージ をしてしまうため、肝に銘じたい。

マーケットバリューはあくまで相対的に決まる。高い技術を持っていても、周りが同じスキルを持っていたら価値は出ない。逆に君だけが持っているスキルは一気に価値が出る。だからこそ、「レア度」にこだわれ。そして「専門性」は、誰でも学べば獲得可能であり、歳をとるほど、差別化しづらくなる。一方で、「経験」は汎用化されにくい。だから、20代は専門性で、30代以降は経験で勝負すべきなんだ。わかるか?

  • 自分が持っている、レアな専門性とはなんだろうか?

人的資産は、正直、20代は大した価値にならない。だが、歳をとり、40代以降になると、極めて重要になる。というのも、ビジネスの世界を見ると、優秀な人ほど意外と、あの人が言うからやろうとか、あの人のためなら一肌脱いでもいいとか、「貸し借り」で動いているからだ。もちろん、それは自分にマーケットバリューがあることが前提だがな。つまり、キャリアとは20代は専門性、30代は経験、40代は人脈が重要なんだ。

  • マーケットバリューを決める最大の要素は業界の生産性。つまり、その境界にいる人間が平均一人当たりどれほどの価値を生み出しているか。
  • 一人当たりの粗利
  • 産業別の 一人当たりのGDP
  • 自分の業界の一人当たりの粗利はいくら?
  • 絶対にだめな選択肢は、生産性が低くて、かつ、成長が見込めない産業で働くこと。

いいか。組織にいると、給与は当たり前のようにもらえるものと勘違いする。そして、大きな会社にいる人間ほど、実力以上の給与をもらっていることが多い。その中の多くの人間は、会社が潰れそうになったり、不満があると、すぐに社長や上の人間のせいにする。だが、勘違いするんじゃない。君が乗っている船は、そもそも社長や先代がゼロから作った船なんだ。他の誰かが作った船に後から乗り込んでおきながら、文句を言うのは筋違いなんだよ。

金を稼ぐ力を身に付ける。それしかないに決まっているだろう。一生下僕として生きていくのか。上司から言われたことにイエスだけ言い続けて、いつか、しがらみから解放される日を待つのか?だが、そんな日は来ないぞ。どれだけ出資しても上には上がいる。君が課長になっても部長がいる。部長になっても本部長がいる。本部長になっても役員がいる。仮に君が社長になっても、もっと偉い人がいる。銀行と株主、そしてクライアントだ。君が、「自分の人生を選ぶ力」を得るまでは、永久に自由になどなれない。

マーケットバリューを高めなければ生き残れないことをひしひしと感じさせるセリフ。

  • 伸びるマーケットには、いずれ大企業の競合となるような 急成長中のベンチャーが複数いる
  • 今伸びているマーケットってどこなんだ?

あぁ、考えてみろ。転職しようと思えば、できる人がたくさんいる組織と、転職したくてもできない人間、それどころか、今の会社にしがみついて、足を引っ張るような人間だらけの会社。どちらの会社が強いと思う?

これには豊田社長の年初スピーチを思い出した。

皆さんは、自分のために、自分を磨き続けてください。トヨタの看板がなくても、外で勝負できるプロを目指してください。私たちマネージメントは、プロになり、どこでも戦える実力を付けた皆さんが、それでもトヨタで働きたいと、心から思ってもらえる環境を作り上げていくために、努力してまいります。 https://youtu.be/vJ8DsIiSb-U?si=u7iazoSwfJ-cb8sq&t=1171(19:31〜)

  • 会社を選ぶ際に重要なのは、以下の3つ。
    • マーケットバリュー
    • 働きやすさ
    • 活躍の可能性
  • 活躍の可能性を確かめる3つの質問
    • 「どんな人物を求めていて、どんな活躍を期待しているのか?」
    • 「今1番社内で活躍し、評価されている人とはどんな人物か?なぜ活躍しているのか?」
    • 「自分と同じように中途で入った人物で、今活躍している人は、どんな社内パスを経て、どんな業務を担当しているのか?」
    • この3つを聞いた上で、自分が社内で活躍できるイメージを持てたらオーケー
  • 良いベンチャーを見極める。3つのポイント。
    • 競合はどこか?そして、競合「も」伸びているか?
    • 現場のメンバーは優秀か?ベンチャーの経営陣は優秀であるのは当たり前だが、他も優秀か?
    • 同業他社からの評判は悪くないか?
  • 良いエージェントの5箇条
    • どこが良かったか、入社する上での懸念点はどこかをフィードバックしてくれる(だからこそ、こちらから必ず「懸念点はどこですか?」と聞いてみること。)
    • 案件ベースでの「良い、悪い」ではなく、自分のキャリアにとってどういう価値があるかと言う視点でアドバイスをくれる
    • 企業に、回答期限の延長や年収の交渉をしてくれる
    • 「他に良い求人案件は、ないですか?」と言う質問に粘り強く付き合ってくれる
    • 社長や役員、人事責任者等との強いパイプがあり、彼らとの面接を自由にセットできる
  • 転職エージェントがやたらと頻繁に使われるケースは、社員の紹介によるリファラル採用や、直接応募で人が取れていない時。本当に優れた会社には勝手に人が集まってくる。

転職してもし出世したければ、中途が活躍できるチャンスがあるかどうか?は見定めたほうが良い。創業間もない会社は例外だが、創業10年から15年以上であれば、中途上がりの役員の割合を確かめる。それがそのまま、君の「出世のしやすさ」だからな。

  • 転職先を探すいくつかの方法
    • ヘッドハンティングを受ける
    • 転職エージェントに登録し紹介を受ける
    • ダイレクトリクルーティング型のサービスを使う
    • SNSなどマッチングサービスを使う
    • 直接応募、または友人から紹介してもらう
  • これらは上から順番に金がかかる。採用担当はこれらのチャネルを使い分けている。特殊な職種や重要なポジションはヘッドハンティングや転職エージェントを使う。なぜならそういう人物は今いる会社でも充分活躍しているから、そもそも転職市場に出てこない。 だから、 会社は狙って取りに行く必要がある。
  • もしも、自分が働きたい会社が明確であれば、様々な手段で仕事を探すこと。SNSのサービスや、直接応募、自分で求人を検索すると言う行為を絶対に忘れてはいけない。

第2章 「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない

  • ほぼ物語の内容なので割愛。

第3章 あなたがいなくなっても、確実に会社は回る

  • マーケットバリューと給料と言うのは、時間差で一致する。
  • マーケットバリューよりも給料をもらいすぎていると問題が発生する。
  • 自分がもらっている給料と自分のマーケットバリューを見つめ直してみる。

転職の際に1番気になるのは、やはり給料だろう。だがいいか。迷ったら、未来のマーケットバリューを取れ。転職を考えるとき、既に給料が高い成熟産業と、今の給料は低いけど、今後の自分のマーケットバリューが高まる会社とで悩むことがあるだろう。 だが、現在の給料に惹かれて成熟企業に入っても、マーケットバリューを高められなかった人間は、本間部長のように、どこかで肩叩き、あるいは言及に合わざるを得ない。覚えておけ。この国の悪いところは、その事実を40代後半まで本人に隠しておくことなんだよ。

  • パートナーが転職に反対を示したときに必要なのは、以下の3つ
    • ロジック
    • 共感
    • 信頼

第4章 仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか?

やりがいを無視して楽しくない仕事をする、実はこれほど簡単な事はないんだよ。だからこそ、人はその道を選ぶ。想像してみろ。例えば君が、道行く人100人に話を聞いてみたとする。あなたはなぜ働いているのですか、と。 多くの人がいろんな理由を語るだろう。家族のためだとか、仕事に愛着があるだとかな。もう一つ、聞いてみたら良い。もし給料が半分になっても今の仕事を続けますか?と。大半の人は、脳と答え、転職すると答える。ということはどういうことか。ほとんどの人間は結局、単に金に買われている。そうだろう?

普通のサラリーマンにとって、お金を稼ぐと言うのは、お金に買われるということだ。君の時間を差し出し、それを投資家や経営者に買ってもらっている。最も簡単な選択肢だ。だが、これからの時代は完全に逆転する可能性がある。

いいか。なぜ給料が低くても、ウェディング業界や美容師、テレビの制作会社などに希望者が絶えないと思う?仕事にクリエイティブな要素があり、やりがいを感じやすいからだよ。逆に、定型的な事務仕事は一般的に人気がない。そして彼らの給料は、正社員の場合、ウェディング業界などより高いことが多い。高給じゃないと誰もやらないからな。「仕事が定型的」で「コストが高い」。つまり投資家や経営者から見れば テクノロジーで代替しやすく、かつ代替したときにより費用削減のインパクトが大きい仕事なんだよ。

やりがいの乏しい提携業務はテクノロジーで代替され、生活コストは下がっていく。すると、今後、この仕事は大別すると3つに分類されていく。

  • 今後の仕事を3つに大別すると・・・
    • 仕事として好きなことを続ける
    • 仕事は最小限にして、趣味に打ち込む
    • 嫌々ながら今の仕事を続ける
  • 「好きなこと」ってなんだろう?
  • ほとんどの人に、「やりたいこと」なんて必要ない

君は馬鹿だな。どうしてもやりたいことがあるなら、そもそも、今、こんなところにいないだろう。重要なのは、どうしても譲れない位「好きなこと」など、ほとんどの人間にはない、ということに気づくことなんだよ。いいか?そもそも、君に心から楽しめることなんて必要ないんだ。

人間には2パターンいる。そして、君のような人間には、心から楽しめることなんて必要ないと言っているんだ。むしろ必要なのは、心から楽しめる「状態」なんだ。

  • 仕事を楽しむ人間が使う言葉は2種類に分けられる
    • To Do (こと)に重きを置く人間
      • 何をするのか、で物事を考える。明確な夢や目標を持っている。
    • Being(状態)に重きを置く人間
      • どんな人でありたいか、どんな状態でありたいかを重視する

「……僕は、To Doを明確に持っている人には憧れます。でも、自分は後者だと思います」 「そうだろう。実際のところ、99%の人間が君と同じ、being型なんだ。そして、99%の人間は「心からやりたいこと」と言う幻想を探し求めて、さまようことが多い。なぜなら、世の中に溢れている成功哲学は、たった1%しかない。To Do型の人間が書いたものだからな。 彼らは言う。心からやりたいことを持てと。だが、両者は成功するための方法論が違う。だから、参考にしても、さまようだけだ」 「そもそも、多くの人にとって、心からやりたいことなど必要ない……」 「そうだ。好きなことがあると言う事は素晴らしいことだ。だが、ないからといって悲観的する必要は全くない。なぜなら、「ある程度やりたいこと」は必ず見つかるからだ。そして、ほとんどの人が該当するbeing型の人間は、それでいいんだ」

being型の人間は、ある程度の年齢になった時点から、どこまでいっても「心から楽しめること」は見つからない。だが、それで全く問題ない。それは、何を重視するかと言う価値観の違いであって、妥協ではないからだ。being型の人間にとって、最終的に重要なのは「やりたいこと」より「状態」だからな。

  • being型の人間にとって重要な状態
    • 自分の状態: 主人公は適切な強さか。主人公は信頼できるか。
      • これはつまりマーケットバリューを意味する。
      • 仕事を楽しむためには「マーケットバリューがある程度あること」も「求められるパフォーマンスとマーケットバリューがある程度釣り合っていること」は必要条件
      • その上で、仕事でつく小さな嘘を最小化すること。自分を好きになれなければ、いくらマーケットバリューが高まり、自分が強くなっても、その「ゲーム」を楽しむことはできない。
    • 環境の状態: 緊張と緩和のバランスは心地良い状態か。
      • この半年の間に、強い緊張を感じた場面を書き出してみる
        • 悪い緊張が10以上ある。→職場を変えた方が良い。
        • 良い緊張が3つ未満→より難しい業務ややったことのないことに挑戦する。
        • 社内からもたらされた緊張は悪い緊張であることが多く、 社外からもたらされた緊張は良い緊張であることが多い
  • being 型の人間が、好きなことを見つける方法
    • 他の人から上手だと言われるが「自分ではぴんとこないもの」から探す方法
    • 普段の仕事の中で「全くストレスを感じないこと」から探す方法
  • 好きなことがわかったら、それを自分の「ラベル」にする
  • まず、自分自身の「キャッチコピー」を考える。人に見せないので、ダサくてもいいし、質にもこだわらなくていい。何枚つけても構わない。
  • 最初は嘘八百で良い。理想や憧れも大歓迎。大事なのは仮でもいいから、そのラベルを自分でつけること、そうすればやるべきこと、仕事を選ぶ基準が見えてくる。

いいか、青野。社会からの目など、死ぬ間際になると、本当にどうでもいいことだ。どこの学校出た、どこの会社に勤めた、そんなものは死を間近にすると全く無意味だ。君がまだそのことを考える段階にいないなら、変わる必要は無い。だが、もしも、やりたいことの種を見つけ始めたのだとしたら、決してその小さな種を殺してはいけない。そのやりたいことを大きくしていく。プロセスを大事にしろ。

世の中で最も恐ろしい言葉の1つは、失敗という言葉だ。これほど定義が難しく、残酷な言葉は無い。多くの成功者が言うように、 最後さえ成功すれば、その途中の失敗も、すべては「必要だった」と言える。要は考え方次第なんだ。だが、その中でも「100%失敗を招く、唯一の条件」というものがある。それは腹を括るべきタイミングで、覚悟を決めきれなかった時だ。 ・・・ 誰にも人生に数度、腹をくくるべきタイミングが存在する。私にとっては最初の転職がそうだった。その時に覚悟を決め切れない。これが100%後悔するための唯一の条件だ。反対に腹をくくり決断した人間には、長い目で見ると失敗などない。誰に笑われても馬鹿にされても、何度でも立ち上がり未来を見たらな。これがこの世の意思決定にまつわる最大の真理なんだよ。

第4章で「転職」から一歩踏み込んだキャリア観について。誰しもキャリアを考えた際に、「好きなことを仕事にできたら幸せだろうな」「でも自分は何が好きなことなのだろう?」という思考に至ると思うが、まさにその話。

まず、「自分の好きなこと」について、todo型/being型という区分けで紹介しているのはうまいなと思った。また、「ほとんどの人間がbeing型であるにもかかわらず、todo型で物事を考えてしまうからうまくいかない」というのも個人的には非常に腹落ちした。

もれなく自分もbeing型だ。どんな状態が自分にとって良い状態なのかを考えるきっかけになったし、実際にキャリアを俯瞰してみようと思った。

この本は1年に1回くらい読み返してもいいかもしれない。